「AI検索に引用されるには、比較・おすすめ記事を増やすべきです」。GEOやLLMOの提案で、こう説明されることがあります。施策として間違いとは限りません。ただし、根拠に置かれた割合だけを見て判断すると、必要なコンテンツを取り違えます。
株式会社Wanokuniが2026年9月4日に発表した「AI Search Cited Award 2026 下期」では、比較・おすすめ・選び方に関するページは、調査対象の引用ページの32.7%でした。比較系が目立つ一方、過半数ではありません。
一方、株式会社WallabeeのOptyino.aiが同年7月に公表した商品レコメンド調査では、「比較検討系タイトル」が85.1%です。32.7%と85.1%。数字だけを並べると、どちらを信じればよいのか迷います。
結論から言えば、二つは矛盾していません。質問、集計単位、分類方法が異なるからです。本稿では公開資料から確認できる範囲と、確認できない範囲を分けます。そのうえで、AI検索対策を発注するときに提案書のどこを見るべきかを整理します。
48万件調査が数えたもの
まず、Wanokuniの調査概要を確認します。対象はChatGPT、Gemini、Google AI Overviews、Google AI Modeの4プラットフォームです。国内21部門・122カテゴリについて、各カテゴリ90問を使い、2026年2月から7月まで計測しています。抽出された引用は484,537件でした。
部門別1位は21部門で20サイトに分かれ、2部門で1位になったのはASPICだけでした。部門1位のスコアも、リユース・買取部門の「おいくら」63.8%から、旅行・店舗・グルメ部門のYahoo! JAPAN 15.6%まで開いています。
この差は、全領域に共通する一つの勝ち方が見つかったことを意味しません。部門ごとに質問も引用候補も異なるためです。少なくとも公開結果からは、特定のサイト形式を横展開すれば全領域で勝てるとは読めません。
なお、この調査を実施したWanokuniは、AI検索での自社ブランドの言及や引用を調べるサービス「Brand UP」を提供しています。調査結果が直ちに無効になるわけではありませんが、調査主体が関連サービスの提供者であることは、解釈の前提として押さえる必要があります。
32.7%の「残り」は公開されていない
公開ページには、「比較・おすすめ・選び方に関するページは、調査対象の引用ページの32.7%」とあります。ここで確認できる分母は「調査対象の引用ページ」です。
同じページは、候補を広く尋ねる質問では比較サイトや紹介記事が目立ち、「料金」「機能」「導入条件」まで具体的に聞くと事業会社のサービスページや公式情報も参照される、と説明しています。質問の具体性によって引用元が変わるという観察です。
しかし、残り67.3%の内訳は公開ページに示されていません。公式ページが何%、ニュースが何%、公的機関や口コミが何%という分類表は確認できません。「比較記事以外の67.3%は公式ページだった」と差し引きで説明することはできません。
また、比較・おすすめ・選び方ページの判定基準、同じURLが何度引用されたときの扱い、90問の全文、4プラットフォームの重み付けも、全体の公開ページだけでは読み切れません。32.7%は有用な観察ですが、サイト全体の制作比率をそのまま32.7対67.3にする根拠ではありません。
85.1%とは、そもそも何の割合か
対比されるOptyino.aiの85.1%は、調査対象も分類単位も違います。調査は「おすすめの洗濯機を教えて」といった商品レコメンド系の質問が対象です。2025年9月16日から2026年5月15日までに取得した18,218件のAI回答から、延べ167,913件の引用URLを抽出しました。
同一回答内の重複を除くと156,957件です。さらに、タイトルがドメイン名だけで記事名を分析できないデータを除外し、116,395件をタイトル分析の対象にしています。この116,395件に対し、タイトルに所定の言葉が含まれるかを数えた結果が85.1%です。
「比較検討系タイトル」の条件は、「おすすめ」「比較」「ランキング」「口コミ・評判」「最新・年号」「選び方」「価格・安さ」のいずれかをタイトルに含むことでした。記事本文を読み、ページの役割を分類した割合ではありません。
| 比較項目 | Wanokuniの32.7% | Optyino.aiの85.1% |
|---|---|---|
| 主な対象 | 21部門・122カテゴリ | 18種類以上の商品カテゴリ |
| 質問 | 各カテゴリ90問 | 商品の「おすすめ」を尋ねる質問群 |
| 集計の土台 | 4プラットフォームの引用484,537件 | 分析可能な引用タイトル116,395件 |
| 分類対象 | 比較・おすすめ・選び方に関するページ | 指定語を含む記事タイトル |
| 公開結果 | 32.7% | 85.1% |
Optyino.ai自身も、質問に「おすすめ」という語が入るため、比較検討系タイトルが多くなるのは自然だと注記しています。GeminiやGrokなど、タイトル情報を取得できなかった一部データを除外したことも明記しています。
こちらの調査主体であるWallabeeも、GEO・LLMOの分析と支援サービスを提供しています。二つの調査はどちらも実務上の示唆を持ちますが、調査設計と事業上の立場を併記して読む必要があります。
数字が動く三つの理由
32.7%と85.1%の差から、AI検索の調査を読むときの要点が三つ見えてきます。
1. 質問の検討段階が違う
「おすすめは何か」と候補を広げる質問では、複数の選択肢を並べたページが答えを作りやすくなります。「このサービスの料金はいくらか」「導入条件は何か」と候補を絞った質問では、公式ページの一次情報が必要です。
AI検索対策は、一種類の記事で全質問を取る競争ではありません。認知、比較、条件確認という検討段階ごとに、必要なページが変わります。BtoBオウンドメディア戦略ガイドで整理したTOFU・MOFU・BOFUの役割分担は、AI検索でも有効です。
2. 数える単位が違う
回答数、引用回数、重複を除いたURL数、ページ数、ドメイン数は別の指標です。一つの回答が10ページを引用すれば、「回答は1件」「引用は10件」になります。同じページが何度も引用された場合、延べ件数で数えるか一意のURLで数えるかでも割合は変わります。
さらに「引用されたページの割合」と「その種類を一つでも引用した回答の割合」は一致しません。提案書に「引用率」とだけ書かれていたら、分子と分母を式で示してもらう必要があります。
3. 分類のルールが違う
記事タイトルに「おすすめ」が入っていることと、本文が比較記事であることは同じではありません。公式サイトが自社製品の選び方を解説する場合もあります。反対に、タイトルに「比較」がなくても、本文で複数サービスを詳細に比べているページもあります。
キーワードによる自動分類は大量データを扱いやすい一方、誤分類を含みます。人が本文を読んで分類すれば意味は近づきますが、再現性と工数が課題になります。どちらが正しいかではなく、採った方法と限界が説明されているかが重要です。
比較記事だけを増やすと何を落とすか
二つの調査から共通して読み取れるのは、比較情報が不要ということではありません。候補を探す質問に対して、選択肢と比較軸を整理したページは有力です。
ただし、比較記事だけを増やすと、検討後半の質問に答える一次情報が薄くなります。料金、機能、導入条件、対応範囲、更新日、契約上の制約、導入後の運用などです。AIが比較記事を引用しても、その比較記事が参照する根拠は、各社が管理する公式情報にあります。
- 選択肢を一覧できる
- 同じ軸で違いを比べられる
- 向く企業・向かない企業が分かる
- 第三者の評価を参照できる
- 料金と契約条件を確認できる
- 機能と対応範囲が確定している
- 更新日と責任主体が明確
- 問い合わせや導入へ進める
BtoB企業がまず行うべきなのは、比較記事の本数を決めることではなく、顧客の質問を検討段階ごとに並べることです。その質問に答える公式ページが欠けていれば整え、比較軸が分かりにくければ解説記事を作る。両方を内部リンクでつなぎます。
一般論を質問の数だけ量産する方法は、検索ポリシー上のリスクもあります。詳しくはAI記事量産が危うい理由で解説しています。AI検索向けでも、読者への固有の価値を増やさないページ展開は避けるべきです。
GEO・LLMO提案書で確認する7項目
AI検索対策を外注するときは、事例や対策項目の多さより、測定条件が開示されているかを確認します。最低限、次の7項目を提案書に入れてもらうと、他社案と比較しやすくなります。
対象AI
ChatGPT、Gemini、Perplexity、Google AI Overviewsなど、どのサービス・モデル・地域・ログイン状態で測るか。
計測期間
いつからいつまで、何回測ったか。AIの回答は更新されるため、単日の観測と継続計測を分ける。
質問設計
誰のどの検討段階を想定し、何問を使ったか。指名・比較・料金など、質問の種類別に結果を出す。
分子と分母
回答、引用、URL、ドメインのどれを数えたか。「引用率」を計算式で確認する。
重複処理
同じ回答内や複数回の計測で、同一URLの重複を残したか除いたか。
分類方法
タイトルの単語で判定したか、人が本文を読んだか。除外条件と誤分類の確認方法も聞く。
事業KPI
引用数の増加を、指名検索、サイト訪問、問い合わせ、商談のどこまで追うか。
全プロンプトを競争上の理由で開示できない場合もあります。その場合は、カテゴリごとの例、質問生成のルール、固定した質問と更新する質問の区別を確認します。再現できない独自指標なら、少なくとも同じ条件で前月と比較できる設計が必要です。
また、調査会社や支援会社が自社データを根拠にすること自体は珍しくありません。確認したいのは、サービスに有利な結論かどうかだけではなく、不利な結果や測定上の限界も開示しているかです。数字の出どころを説明できる会社は、施策が外れたときの検証もしやすくなります。
成果物は「記事本数」ではなく質問への回答
GEO・LLMO施策の発注で「比較記事を月10本」と本数だけを決めると、記事を納品した時点で仕事が終わります。しかし買い手の質問に答えられたか、AIの回答で正しく参照されたか、問い合わせにつながったかは残ります。
発注時には、記事一覧ではなく次の三つを成果物に含めるのがおすすめです。
- 検討段階ごとの質問リストと、回答する既存ページ・新規ページの対応表
- プロンプト、日時、対象AI、引用URLを残した測定ログ
- 誤った言及、引用されない重要質問、競合との差を反映した更新計画
この形なら、比較記事が必要な質問には比較記事を作り、公式情報が必要な質問にはサービスページを直せます。記事を増やす前に、既存ページの更新や構造化、内部リンクで解決できる課題も見つかります。
AI検索対策の数字は、結論ではなく質問です。「32.7%だった」から始めて、「何を、どの質問で、どう数えたのか」まで戻る。その手順を持てば、85.1%という別の数字が出ても、施策を振り回されずに評価できます。
よくある質問
AI検索に引用されるには、比較記事を増やすべきですか?
候補を広く尋ねる質問には有効な場合があります。ただし、料金、機能、導入条件を尋ねる質問では公式ページも参照されます。顧客の質問を検討段階ごとに分け、不足しているページを補う順序が先です。
32.7%以外の67.3%は公式ページですか?
公開資料からは判断できません。Wanokuniの公開ページは、具体的な質問では公式情報も参照されると説明していますが、残り67.3%の種類別内訳は掲載していません。
32.7%と85.1%は、どちらが正しいのですか?
どちらも各調査の条件内の結果です。前者は複数領域の「比較・おすすめ・選び方に関するページ」、後者は商品おすすめ質問で引用された「指定語を含む記事タイトル」を数えています。同じ現象を同じ尺度で測った数字ではありません。
AI検索対策会社を選ぶとき、最初に何を聞けばいいですか?
提案書にある引用率の分子と分母を聞いてください。その次に、対象AI、計測日、質問一覧、重複処理、分類方法を確認します。同じ条件で再測定できなければ、施策前後の比較ができません。
参考資料
- Wanokuni「AI Search Cited Award 2026 下期」(2026年9月4日公表)
- Wanokuni「AI検索で最も引用されるサイトは?21部門122カテゴリの『AI Search Cited Award 2026 下期』を発表」(2026年9月4日)
- Wallabee/Optyino.ai「生成AIが商品レコメンドで引用する記事タイトルとは?」(2026年7月15日)
本稿は各社の公開資料をもとに、調査設計と解釈上の限界を整理したものです。未公開のプロンプト、分類明細、内部データについて推測していません。AIサービスの回答や引用傾向は、モデル更新、地域、日時、利用条件により変わります。


