AI検索対策の提案書には、引用率や言及率を示す数字が並びます。数字が大きいほど説得力があるように見えますが、割合は分母が決まるまで意味が定まりません。
2026年に公表された二つの調査には、「比較・おすすめ・選び方に関するページは32.7%」と「比較検討系タイトルは85.1%」という結果があります。結論が反対に見えるのは、測っている対象が違うからです。本稿では両調査を分解し、AI検索対策を外注するときに数字の確かさを見分ける方法を整理します。
32.7%が示す範囲
AI検索対策エージェント「Brand UP」を提供する株式会社Wanokuniは、2026年9月4日に「AI Search Cited Award 2026 下期」を発表しました。特設ページと発表資料には、調査全体の規模が示されています。
対象はChatGPT、Gemini、Google AI Overviews、Google AI Modeです。21部門の首位は20サイトに分かれ、2部門で首位になったのはASPICだけでした。部門首位のスコアも、リユース・買取の63.8%から旅行・店舗・グルメの15.6%まで開いています。
同調査は、比較・おすすめ・選び方に関するページが「調査対象の引用ページ」の32.7%を占めたと説明します。一方で、料金、機能、導入条件を具体的に尋ねると、事業会社のサービスページや公式情報も参照されたとしています。
ここで、67.3%をそのまま「残された引用機会」と呼ぶことはできません。公開資料だけでは、その他の内訳、URLの重複除去、ページ分類の判定方法、各プロンプトへの重み付けが分からないからです。32.7%を484,537件へ掛けてページ数を出すことも避けます。引用件数と「引用ページ」の関係が説明されていません。
85.1%が示す範囲
株式会社Wallabee/Optyino.aiは、2026年7月15日に商品レコメンド回答の引用タイトル調査を発表しました。こちらは商品やサービスの「おすすめ」を尋ねるプロンプトに対象を絞っています。
18,218件のAI回答から延べ167,913件の引用URLを抽出し、同じ回答内の重複を除いた件数は156,957件でした。そのうち、記事タイトルとして分析できる116,395件を分類しています。この引用URLは12,389件の回答に含まれていました。
比較検討系は、タイトルに「おすすめ」「比較」「ランキング」「口コミ・評判」「最新・年号」「選び方」「価格・安さ」のいずれかを含む記事です。記事本文の形式を人が読み分けた数字ではなく、タイトル上の定義済みキーワードで分類した数字です。
- 21部門・122カテゴリ
- 候補探しから条件確認まで含む
- 4プラットフォーム
- 引用ページの内容を分類
- 詳細な分類手順は非公開
- 商品おすすめ系に限定
- 18種類以上の商品・サービス
- 8種類のAIモデル・検索機能
- 分析可能な引用URLのタイトルを分類
- 指定語の有無で判定
Optyino.ai自身も、対象プロンプトに「おすすめ」が含まれるため、引用タイトルに同じ語が多いのは自然だと注記しています。商品おすすめ以外へ一般化できず、タイトルだけで引用が決まるわけでもないと説明しています。
二つの数字は両立する
広い質問群では比較ページが32.7%。商品おすすめへ絞り、タイトルに比較検討系の語があるかを見れば85.1%。この二つは矛盾しません。むしろ、質問の段階が変わると、引用される情報源も変わることを示しています。
- おすすめを知りたい
- 選択肢を比較したい
- ランキングを見たい
- 違いを一度に把握したい
- 料金を確認したい
- 機能の上限を知りたい
- 導入条件を確かめたい
- 公式仕様と更新日を見たい
自社コンテンツの設計も、比較記事か公式ページかの二択にはしません。候補を広げる記事から、機能、料金、導入条件、事例へ進める。質問の具体化に合わせて、引用されるページと読者の行き先をつなぎます。
部門首位が15.6%の領域と63.8%の領域では、同じ目標値を置けません。汎用の「LLMO対策10選」を適用する前に、自社の質問群と競合する情報源を測る必要があります。
分母を5項目で読む
調査を読むときは、結論より先に調査票を復元します。最低限、次の順で確認すると、数字を施策へ誤用しにくくなります。
質問を確認する
候補探索、比較、料金確認、導入条件、トラブル解決のどれか。質問文に「おすすめ」が入っていれば、結果にも影響します。
AIを確認する
対象製品、モデル、地域、ログイン状態、検索連携の有無を見る。AIの更新で結果は変わるため、計測日も記録する。
単位を確認する
回答、引用回数、重複除去URL、ドメイン、タイトルのどれを数えたか。一つの回答に複数引用があれば分母は変わります。
分類を確認する
人が本文を判定したのか、タイトルのキーワードで分けたのか。重複分類と未分類の扱いも確かめます。
自社との差を見る
業界、商品単価、検討期間、指名度、情報の規制が調査対象と近いか。離れていれば仮説として使い、自社で測ります。
この確認をせず、「比較記事が85.1%だから比較ページを増やす」と結論づけると危険です。BtoBの導入条件を尋ねる質問や、技術仕様を確認する質問では、公式ページが必要になる可能性があります。公開資料で確認できるのは傾向であり、自社の因果ではありません。
提案書を4点で比べる
AI検索対策を外注するとき、対策項目の多さより測定設計を比べます。改善前の現在地を再現できなければ、施策後の差も評価できません。
質問群が見えるか
想定顧客の検討段階ごとに、どの質問を測るか。雛形だけでなく、自社固有の質問をどう作るか。
分母が固定されるか
回答数、引用URL数、重複除去、対象AI、計測日を保存し、前後比較で同じ条件を再現できるか。
引用と成果を分けるか
引用率だけでなく、指名検索、サイト流入、診断、資料請求、商談など事業側の指標へ接続するか。
限界が書かれるか
モデル更新、地域差、APIと実画面の差、非公開プロンプト、分類誤差を報告書に残すか。
「引用率を何%に上げるか」だけでは、比較の土台が足りません。どのAIへ、いつ、何を聞き、何を一件と数えるのか。その定義を提案書と見積もりに含めてもらいます。
両調査の実施主体は、それぞれAI検索対策サービスを提供しています。事業者による調査だから無効なのではありません。公開された方法と未公開部分を分け、第三者の再現可能性を見て使います。
自社計測から始める
内製が向くのは、質問群を継続管理し、モデル更新を追いながら計測条件を保てる場合です。外部支援が向くのは、顧客の検討過程から質問を設計し、サイト改善とコンテンツ制作までつなげたい場合です。
baluboは、AI検索の数字だけをレポートするのではなく、読者が何を判断するページかを整理します。企画、取材、編集、構造化、公開後の計測を同じ設計でつなぎます。途中工程からも対応できますが、質問群とコンテンツの役割を揃えるには上流からの関与を推奨しています。予算に応じて範囲を調整します。
まとめ
32.7%と85.1%は、どちらも公開資料にある数字です。ただし、前者は21部門・122カテゴリの引用ページ、後者は商品おすすめ系回答に含まれた分析可能な引用URLのタイトルを対象にしています。質問、単位、分類が違うため、数字を同じ表へ置いて優劣を決めることはできません。
AI検索対策の提案を比べるときは、割合の大きさより、質問、対象AI、計測期間、集計単位、分類方法を確認します。そのうえで自社の質問群を固定し、同じ条件で計測を繰り返す。引用されるための施策は、分母を定義するところから始まります。
よくある質問
比較記事を増やせば引用は増えるのか
二つの調査だけでは因果を示せません。商品おすすめ系では比較検討語を含むタイトルが多く引用されましたが、タイトルだけが原因とは確認されていません。公式仕様、一次情報、ドメインの信頼性、情報の新しさも候補です。
67.3%は公式ページなのか
分かりません。Brand UPの公開資料は、32.7%以外の詳細な内訳を示していません。67.3%を公式ページ、口コミ、ニュースなどへ独自に配分することはできません。
引用率の目標は何%がよいのか
一律の基準は置けません。Brand UP調査でも部門首位は15.6%から63.8%まで開いています。自社の質問群、対象AI、競合、現在値を固定し、同条件の改善幅で評価します。
参考資料
- AI検索対策エージェント「Brand UP」調べ「AI Search Cited Award 2026 下期」(計測期間:2026年2月〜7月、2026年9月7日確認)
- 株式会社Wanokuni「AI検索で最も引用されるサイトは?21部門122カテゴリの『AI Search Cited Award 2026 下期』を発表」(2026年9月4日)
- 株式会社Wallabee/Optyino.ai「生成AIが商品レコメンドで引用する記事タイトルとは?」(2026年7月15日、AI回答18,218件)
両調査はAI検索対策サービスの提供事業者が実施しています。公開資料で確認できないプロンプト全文、分類の再現手順、Brand UP調査のその他67.3%の内訳は、本稿の結論に含めていません。



