試しに、ChatGPTを開いてこう聞いてみてください。「◯◯分野で技術力のある日本のメーカーは?」。◯◯には、自社の得意領域を入れてみてください。その回答に、御社の名前は出てきたでしょうか。競合の名前だけが並んだとしたら、それは検索順位の問題ではありません。AIが御社を「説明できる情報」を持っていない、というサインです。
情報収集の起点は、いま急速にGoogle検索から生成AIへ移りつつあります。これはBtoCだけの話ではありません。半導体・部品・装置メーカーのような、技術で選ばれるBtoB製造業こそ、この変化の影響を強く受けます。この記事では、いま何が起きているのかをデータで確認し、製造業サイトがAIに読まれない理由と、まず取るべき打ち手を整理します。連載「AI時代の製造業コンテンツ戦略」の1本目です。
候補者も購買担当も、AIに聞き始めている
情報の探し方が変わっています。Gartnerは2024年、2026年までに従来の検索エンジンの検索量が25%減少すると予測しました。理由は、ChatGPTのような生成AIが「答えそのもの」を返すようになり、検索してリンクを開くという行動を代替し始めたことです。人はもう、10本の青いリンクを見比べるのではなく、AIがまとめた一つの答えを受け取るようになっています。
この変化は、製造業にとって「採用」と「購買」の両面で効いてきます。
採用の側では、求職者がAIで企業を下調べするのが当たり前になりました。Indeedが2025年に公表した調査では、求職者の約70%が企業研究や応募準備に生成AIを使っていました。「この会社は何をしているのか」「技術的な強みはどこか」を、応募者はまずAIに尋ねます。そのときAIが自社について語れなければ、候補者の検討リストにすら載りません。
購買の側でも同じ変化が起きています。海外の調査では、B2Bの買い手のうち4人に1人が、従来の検索よりも生成AIを頻繁に使って取引先を調べ、3分の2はAIチャットボットをGoogleやBingと同等以上に活用していると報告されています。展示会で名刺を配る前に、購買担当はすでにAIに「候補企業」を聞いている。そういう時代に入りました。
検索1位でも、AIの回答には出てこない
ここで多くの製造業が見落としているのが、「SEOで上位を取ること」と「AIに引用されること」は別物だ、という事実です。自社サイトがGoogleで1位に表示されていても、ChatGPTやPerplexityの回答に自社が登場するとは限りません。
理由は、AIが答えを作る仕組みにあります。生成AIは検索結果の一覧を見せるのではなく、複数の情報源を読み込み、要約して一つの回答にまとめます。そもそも、その回答が表示された時点でユーザーはリンクを開かなくなります。米Pew Research Centerの2025年の調査では、検索結果にAIの要約が出たとき、外部リンクをクリックした人はわずか8%でした。Ahrefsの分析では、AI要約の表示によって検索1位のクリック率は58%減少しています。
クリックされないなら、勝負はAIの回答文の中で決まります。そしてAIの回答に名前が挙がる企業は、ごく少数に絞られます。BtoBの購買行動を調べた6senseの2025年の調査では、買い手は検討初日にすでに約4社のショートリストを持っており、最終的にそのなかから選ぶ割合は95%にのぼりました(前年は85%)。最初に接触された企業が受注する確率は約80%とも報告されています。
AIが挙げる数社に入っていなければ、そもそも検討の土俵に上がれない。SEOで2ページ目に沈むのとは、意味の重さが違います。検索なら頑張ってスクロールすれば見つけてもらえましたが、AIの回答には「2ページ目」がないからです。
製造業サイトがAIに「読まれない」3つの理由
では、なぜ技術力のある製造業ほど、AIに引用されにくいのでしょうか。多くのサイトに共通する理由は、次の3つに整理できます。自社サイトを思い浮かべながら読んでみてください。
スペックの羅列で、文脈がない
製品ページが型番・寸法・数値の一覧で終わっている。「何ができるか」は書いてあっても、「どんな課題を、なぜ解決できるのか」という文脈がない。AIは文脈から意味を読み取るため、スペック表だけでは「この会社は何が強いのか」を説明できない。
第三者の言及が、極端に少ない
自社サイトでの主張はあっても、外部メディアの記事、導入事例、業界紙での紹介といった第三者からの言及が乏しい。AIは複数の情報源で裏づけられた情報を優先する。自社サイトの中だけで完結した情報は、信頼の根拠が弱いと判断されやすい。
自然言語の問いに、答えていない
サイトが「製品情報」「会社概要」という提供側の分類で作られ、「◯◯に強いメーカーは?」「△△の課題はどう解決する?」という買い手の問いの形になっていない。AIは自然言語の質問に答えるため、問いと対になる情報がないと引用しにくい。
共通するのは、いずれも「技術力そのものの問題ではない」という点です。優れた技術を持っていても、それがAIに読み取れる形で言語化・構造化されていない。だから、実力があるのにAIの回答に出てこない、という現象が起きます。展示会で直接話せば伝わる強みが、Web上ではAIに翻訳されないまま埋もれているのです。
AIに引用される会社がやっていること
裏を返せば、打ち手ははっきりしています。AIに引用される企業は、技術を「AIと買い手の両方が理解できる言葉」に翻訳し、その情報が外部からも参照される状態を作っています。具体的には、製品スペックを課題起点のストーリーに翻訳した事例記事を用意し、業界メディアや取材を通じて第三者からの言及を増やし、買い手が実際に投げる問いの形でコンテンツを設計しています。
これは、記事を大量に出すこととは違います。むしろ逆です。テンプレートで量産された記事は、独自の情報も明確な出典も設計された文脈も持たないため、AIにはかえって引用されにくい。この点は前回の記事「なぜ『記事の量産』はAI時代に価値を失うのか」で詳しく整理しました。必要なのは本数ではなく、戦略を設計し、技術を翻訳し、品質を担保して成果を測り続ける編集部の機能です。製造業の場合、ここに「技術を正しく理解して言語化できる編集力」が加わります。専門用語を噛み砕きつつ、技術者の意図を損なわずに伝える力です。
まず、現在地を知る
対策の話に進む前に、やるべきことがあります。いま、AIが御社をどう説明しているのかを知ることです。改善は、現在地の把握から始まります。
自社サイトが構造化データを備えているか、AIに読み取られやすい情報設計になっているか。それを手早く確認できるように、baluboではAI可視性の無料診断ツールを用意しました。ドメインを入力するだけで、生成AIに引用・参照されやすいサイト構造になっているかを診断できます。
冒頭でChatGPTに聞いてみた結果に少しでも引っかかった方は、まず現在地を確かめてみてください。
よくある質問
GEOとSEOは、何が違うのですか?
SEOは検索エンジンの結果ページで上位に表示されることを目指す取り組みです。GEO(Generative Engine Optimization)は、ChatGPTやPerplexityといった生成AIの回答の中で、自社が引用・言及されることを目指す取り組みです。SEOで上位でもAIの回答に出てこないケースがあるため、両者は別のものとして考える必要があります。
効果が出るまで、どのくらいかかりますか?
AIがサイトの情報を学習・参照するには時間差があり、即効性のある施策ではありません。ただし、構造化データの整備や情報設計の見直しは、SEOにも採用広報にも同時に効きます。まずは現在地を診断し、影響の大きい箇所から着手するのが現実的です。
何から手をつければいいですか?
最初の一歩は、自社の現在地を客観的に把握することです。AIが自社をどう説明しているか、サイトがAIに読み取られやすい構造になっているかを確認したうえで、3つの理由(文脈・第三者言及・問いの設計)のどこが弱いかを見極めると、優先順位がつけやすくなります。
次回、連載「AI時代の製造業コンテンツ戦略 #2 採用広報編」では、技術系人材の採用にGEOがどう効くのか、候補者に「選ばれる」情報設計を掘り下げます。
データの出典
- Gartner「Gartner Predicts Search Engine Volume Will Drop 25% by 2026, Due to AI Chatbots and Other Virtual Agents」(2024年2月)
- Indeed(求職者の生成AI活用に関する調査、2025年)
- Pew Research Center「Google users are less likely to click on links when an AI summary appears in the results」(2025年3月)
- Ahrefs(AI要約による検索クリック率への影響分析、2025年)
- 6sense「The B2B Buyer Experience Report for 2025」(2025年)
- B2B購買における生成AI活用の各種調査(2025年)
※ 各数値は調査時点のものです。AI検索やアルゴリズムの状況は変化するため、最新の傾向は一次情報をご確認ください。海外調査を含むため、国内・製造業の実態とは差がある場合があります。
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