会社名で検索される回数を増やしたい。そう考えると、広告、SNS、イベントなど、露出を増やす施策から始めがちです。しかし、名前を見た回数が増えても、必要な場面で思い出されなければ、相談にはつながりません。
指名検索の前には、「この課題なら、あの会社を調べよう」という想起があります。設計すべきなのは会社名の認知だけでなく、顧客が困る場面と会社名の結びつきです。本記事では、BtoB企業が思い出される場面を定め、コンテンツと営業活動へ展開する方法を解説します。
候補リストは、問い合わせ前につくられる
6senseが北米・欧州・アジア太平洋地域のBtoB購買担当者から約4,000件の回答を集めた2025年調査では、最終的な購入先の95%が検討初日の候補リストに入っていました。
対象は一定規模以上の海外BtoB購買です。日本のすべての取引へそのまま当てはめることはできません。それでも、問い合わせ後の提案だけでなく、問い合わせ前に候補として思い出される状態が重要だとわかります。
思い出されるのは、業種ではなく場面である
LinkedIn B2B InstituteとEhrenberg-Bass Instituteは、購買状況でブランドを想起するきっかけを「Category Entry Points」と呼び、いつ、どこで、誰と、何を、なぜ、といった場面の手がかりから整理しています。
たとえば「ブランディング会社」という業種名だけでなく、次のような状況です。
変化のとき
新規事業を出す、複数事業を統合する、採用方針を変える。
説明がずれたとき
営業、採用、広報が、それぞれ違う言葉で会社を説明している。
比較されるとき
競合との違いを問われても、機能や価格以外の基準を示せない。
知見を届けるとき
社内には専門知識があるが、顧客が理解できるコンテンツになっていない。
顧客は、会社の提供サービスを常に思い出しているわけではありません。自社の仕事で変化や停滞が起きたとき、その状況と結びつく会社を検索します。
指名検索は、ブランド名だけを数えない
会社名の表記には、正式名称、略称、サービス名、代表者名、誤記などがあります。また、会社名と課題を組み合わせた検索は、単独の指名検索よりも想起の中身を示します。
検索件数の増加だけで、認知施策の効果とは断定できません。採用、報道、広告、既存顧客のログインなど、別の理由でも会社名は検索されます。問い合わせ内容、流入先、実施施策の時期と合わせて読みます。
思い出してほしい場面を選ぶ
対応できる場面をすべて並べると、「何でも相談できる会社」に戻ってしまいます。まず3〜5個の場面を候補にし、次の基準で優先順位をつけます。
場面を集める
問い合わせ、商談、紹介で、相談前に何が起きていたかを集める。
頻度を見る
顧客側で繰り返し起き、自社が継続して扱える問題かを確認する。
適合を確かめる
知見、方法、体制、利益の面から、責任を持てるかを確認する。
競合と比べる
同じ場面で思い出される代替手段や会社を調べる。
証拠を結ぶ
実績、記事、担当者、成果物のうち、約束を確かめる材料を置く。
たとえば「記事制作が必要なとき」より、「専門的な事業を、初めての顧客へ説明できないとき」のほうが、場面と問題が具体的です。その会社が記事以外の方法も選べるなら、相談の余地も生まれます。
一つの場面を、4種類の情報へ展開する
想起をつくるには、同じコピーを繰り返すのではなく、一つの場面を異なる役割の情報へ展開します。
- 問題が起きる理由を解説する記事
- 社内で確認するチェックリスト
- 選択肢と判断基準
- よくある失敗と条件
- 似た状況の実績紹介
- 具体的な進行方法
- 担当範囲と体制
- 向く案件・向かない案件
非指名検索の記事から問題を理解し、実績で方法を確かめ、サービスページで相談条件を確認し、会社名で再訪する。この流れをつくると、SEOと指名検索を別々の施策として扱わずに済みます。
サイトと営業の言葉を揃える
Gartnerの2024年調査では、BtoB購買担当者の69%が、企業サイトと営業担当者の説明に不一致を感じたと回答しています。サイトで「課題から相談できる」と伝えても、営業資料が制作物の一覧から始まれば、想起と体験がつながりません。
少なくとも次の接点で、思い出してほしい場面、約束、証拠を揃えます。
- トップページとサービスページ
- 検索記事と実績紹介
- 会社紹介資料と提案書
- イベントのテーマと登壇内容
- 営業担当者の初回説明
- 紹介者へ伝える短い説明
表現を一字一句統一する必要はありません。顧客の困りごとと、自社が責任を持つ変化が同じであることが重要です。
AI検索でも、場面と証拠を分けない
検索結果や生成AIの回答で会社が参照されるには、ブランド名を多く書くだけでは足りません。どんな問題を扱い、どんな方法と実績があるかを、人にも機械にも読み取れる形で公開します。
一ページ一役割
サービス、実績、記事、会社情報を混ぜず、主題と見出しを明確にする。
固有の証拠
独自調査、実績、方法、担当者など、出典を確かめられる情報を置く。
関係をつなぐ
記事から実績、実績からサービスへ、読者の判断順に内部リンクする。
更新を示す
公開日、更新日、運営者、問い合わせ先を明示し、古い条件を残さない。
AIによる言及や検索順位は外部要因で変わるため、掲載を約束することはできません。まずは会社が何の場面で候補になるかを、公開情報のなかで矛盾なく説明できる状態をつくります。
90日で観察する
想起の形成には時間がかかります。短期で検索件数だけを追わず、次の順序で観察します。
- 狙った場面の記事が、関連する非指名検索で表示されたか
- 記事から実績、サービス、会社情報へ読まれたか
- 会社名と問題を組み合わせた検索が現れたか
- 問い合わせに、その場面の言葉が含まれたか
- 商談で、想定した強みが選定理由として挙がったか
検索ボリュームが小さいBtoB領域では、数件の変化を一般化できません。期間を揃え、問い合わせや商談の記録と合わせて仮説を更新します。BtoBオウンドメディアの設計でも、検索流入だけでなく商談での活用まで含めた考え方を紹介しています。
外部に頼む範囲
顧客が相談する直前の状況を把握し、各接点の表現を更新できるなら、想起設計は社内で進められます。外部支援が役立つのは、社内のサービス分類を顧客の場面へ翻訳したいとき、記事、実績、Web、営業資料を同じ方針で展開したいとき、第三者への取材で選定理由を確かめたいときです。
baluboでは、会社の価値を一文にするだけでなく、どの場面で思い出されるかを定め、コンセプト、発信方針、コンテンツ、Webへ接続します。指名検索は目的ではなく、顧客の記憶と会社の実態が結びついた結果として観察します。
まとめ
- 指名検索の前には、「この課題なら、あの会社」という想起がある
- 思い出される場面は、業種だけでなく、変化、停滞、比較の状況から決める
- 非指名記事、実績、サービス、営業資料を、同じ場面と証拠でつなぐ
- 会社名単独だけでなく、会社名+課題、問い合わせ、商談の言葉を観察する
- 検索件数の増加を単一施策の成果と断定せず、同じ期間と条件で検証する
よくある質問
Q. 指名検索を増やすには、広告を出すべきですか。
広告は名前を知る接点になりますが、何の会社として覚えるかは、広告の内容と遷移先で決まります。先に想起してほしい場面と証拠を整え、広告がその結びつきを強める設計にします。
Q. 会社名の検索数が少なくても、問題がありますか。
市場規模や商談数が小さいBtoB企業では、検索数だけで良否を判断できません。対象顧客からの紹介、問い合わせ内容、商談での理解など、少数でも事業に近い行動を合わせて見ます。
Q. 複数の事業がある会社は、想起される場面を一つにすべきですか。
会社全体の共通する約束を一つ持ち、事業ごとに具体的な場面を分ける方法があります。場面同士が無関係なら、サイトの導線やブランドの階層も含めて整理します。
データの出典
- 6sense, 2025 B2B Buyer Experience Report(世界3地域、回答約4,000件)
- Jenni Romaniuk / Ehrenberg-Bass Institute / LinkedIn B2B Institute, Category Entry Points in a B2B World(2022年)
- Gartner, Sales Survey Finds 61% of B2B Buyers Prefer a Rep-Free Buying Experience(2024年調査、n=632)
※海外のBtoB購買調査を、日本のすべての企業へ直接一般化はできません。指名検索は、報道、採用、広告、既存顧客の行動でも変わるため、単一の施策との因果関係は断定していません。



